2011道東の初夏・オオジシギの ディスプレイフライト

2011,06,10-07,15道東での取材。主な取材地は次の通りです。
野付半島、浜小清水、常呂、紋別、浜頓別、サロベツ、豊富町の原生花園他。
by Happy Chappy

 Latham's snipe Display flight course

風上に向けて急降下、反転急上昇

@左側低い場所から飛び出す。下がり始めるA。一番下までBCD
E上昇し始める。以下同様に何度か繰り返す。

 単独ディスプレイフライトコースの解説
@飛びながら前々奏・ジッ・ジッ・ジッ・と短音で発する
A降下直前には前奏・ジーッ・ジーッ・ジーッ・と長音を発する
B急降下始める
C本番奏・ズビャクズビャクズビャク3-5回
D風切り音、翼・尾羽の風切り音・・ザザザーーーッ
E小声で後奏・ズビャクズビャクズビャク2-3回
以上がオオジシギの単独ディスプレイフライトパターンの一例です。
 繁殖期のオオジシギはテリトリー内で休憩・食事・休憩・ディスプレイフライトを繰り返す。地上で休憩している時もライバルのディスブレイフライトの声・風切り羽音が聴こえると、ジッジッジッ・・・・ジーッジーッジーッ・ズビャクズビャクズビャクと声をだす。そして地上からゆっくりと飛び立ち繁殖地の広範囲を低くそして自分のテリトリーの上空では旋回飛翔を続けながら、ジッジッジッジッ・・・・と飛び続けて高度を最高に持って行く。この高さは白夜のような濃霧では高度は低く、晴れて快晴の空では高高度まで上昇する。そして風上に向けて高度を維持してジーッジーッジーッと声が短音から長音に変化する。次の瞬間に急降下を開始する。そしてズビャクズビャクズビャクと発しながら、風切り音がザザザザザーーーッと続く。急反転上昇しながらやや小声でズビャクズヒ
゙ャクズビャクと鳴いてV字・翼でちょっと滑空・飛翔をしてから再び次のフライトに向けて旋回飛翔を続ける。
 地上でも囀りをする。前奏・前々奏・本奏と続けて歌うのがフルコースですが前々奏、前奏で終了することもごく普通にあります。

 普通にはお気に入りのソングポストで寛ぎそして時には歌うのです。

 

 いろいろなソングポストで歌うオオジシギ

ソングポストは何でも利用しています。電柱・電線・廃船・牧柵・木立・枯れ木・枯れ茎など様々なソングポストがあるのです。看板なんてしっかり固定されていて毎年利用可能です。テレビアンテナ・家屋の屋根などその場所で地上より高い所を利用することが多い。



旋回飛翔・ジッジッジッ・前々奏

道東の六月は朝霧が出る、今日こそはと早起きして繁殖地に到着するが、白夜のような朝霧がでる。こんな日は晴れになるが晴れる頃にはオオジシギはすっかり静かになる。なかなか早朝からの青空・快晴でのディスプレイフライトはチャンスは少ない。

 テリトリーの上空で降下の準備を整えるかのようにゆっくりと飛翔を続ける。そして気が熟するとジーッジーッジーッと長音になる。

翼を閉じて尾羽を広げる最高のスピードで風切り音・ざざざざざざーーーーーっ。

 ディスプレイフライトが一段落してソングポスト、地上に降りる寸前のオオジシギ。六月下旬になると声もフライトも少なくなり何時しか静かな原生花園は秋を迎える。


オオジシギの発する声の考察

秋の渡りのオオジシギは飛び立ちの際に一声・ゲッと発することは良く知られている。それでは繁殖期にはどのような声・歌声を聴かせてくれるのだろうか。先にも述べたように前々奏はジッ・ジッ・ジッと短音。前奏はジーーッジーーッと長音である。そして本奏ではズビャクズビャクズビャクとなるのが普通である。後奏は小声ズビャクズビャクである。このようにオオジシギはザ行の音を発するのである。それでは秋の渡りの時の声は繁殖期にはどうでしょうか。オオジシギの餌場になっている路側帯の芝地に隠れた個体にそっと近づいて見た。そしたらそこから二個体が飛び立ち、ゲッ、ゲゲッというような明らかに警戒音・威嚇音のそれであった。秋の一声は至近距離からの飛び立ちであり、警戒音・威嚇音であると確信している。地鳴きの声。

 集団ディスプレイフライト

エリマキシギは地上で集団ディスプレイすることが知られています。オオジシギの集団ディスプレイフライトについては全くの知識が有りません。でした。最近これらの報告書などがバーダー誌に掲載されて少しずつその意味が解き明かされつつあります。つまりオオジシギは♂が集団ディスプレイフライトする。そこに♀が飛び入り複数の♂と交尾する。そして♀が巣作り子育ての全てをするということです。四月にはオオストラリア周辺から渡来し間もなくデイスプレイフライトが盛んになる。五月が最も盛んで六月には少なくなり七月には殆ど観られなくなる。のが一般的の様子です。六月中旬以降には雛を連れて歩くオオジシギを観察したことがあります。
従って七月になると♂のオオジシギはそろそろ南への移動の準備を始める頃なのです。関東では七月の中旬以降になると田んぼに現れるようになります。そして暑い暑い盛りのお盆の頃がオオジシギの南下の最盛期になるのです。オオジシギは日本列島の北部及び北海道で多くの繁殖地になっています。カラフト、朝鮮半島北部、北方四島でも繁殖は明らかです。それらは多分ちょっとずつ異なる形態・色彩を持つのではないでしょうか。沖縄で観るオオジシギはどうしても道東で観ている個体とは明らかに異なっているような気がします。

 四羽による集団ディスプレイフライト

 オオジシギの♂たちは広大な繁殖地を複数個体で旋回飛翔しながら互いに牽制するかのように着かず離れず様々な声を発しながらブィスプレイフライトをするのです。単独でのフライトは極限られた狭い範囲のテリトリーですが集団ではいろいろな行動が観られます。高く低く旋回飛翔を繰り返しながら単独のディスプレイフライトのようなこともその集団の中で観られるのです。発する声はジジジジッ、ゲッゲッゲッなどの警戒・威嚇音を常に出している。浜小清水で観察した7個体による集団ディスプレイフライトが最大の数でした。旋回飛翔をしていると次第に高度を下げて地上に着地するそして次々に着地してその集団フライトは静かになるのです。しかしそこから先が本来の目的のようです。飛び込んできた♀は集団の中の複数の♂と交尾するのです。♀は巣作りから子育てまでを単独で行うのです。この辺の行動は未知の部分です。豊富町の原生花園で聞いた話です。・・・・・・畑で繁殖したオオジシギの産卵数は2個でした。天敵はチゴハヤブサで♂♀が分担してオオジシギを追い出す、そして隠れていた♂が猛スピードで追いかけて捕食するのだそうです。浜小清水の原生花園を旋回飛翔していたのは確かにチゴハヤブサでした。孵化した雛たちの天敵は湿原の王者チュウヒです。チュウヒは定期的に飛んで来てはネズミや雛たちを捕食しているのです。オオジシギたちも簡単に繁殖して数を増やすどころか維持することすら難しい時代なのです。2011,07,27
 Latham's Snipe Displayflight
ジシギの外側尾羽はディスプレイフライトでの音を出す為に変化・進化したと言われている。

 201209,19by HappyChappy(C)Birdopia2012
renewal 2022.05.22
  Golden Snipe Gallinago Aurum キンジシギ 黄金地鴫
 
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