ジ シ ギ 識 別 読 む 図 鑑
 BirdopiaGallinavi
by HappyChappy04,09,2012
 T、タシギ編(Common Snipe Gallinago gallinago)

日本で観られるタシギ属(Gallinago)は五種類です。そのうちアオシギだけは他の四種とは生息環境や姿・形・色彩が異なるので混同・誤認されることは少ないと思う。他の四種は春・秋の移動・渡りの時期は同様な環境に生息し姿・形・色彩が酷似している。酷似しているが由に識別は困難である。というのが一昔、二昔前の識者の意見でした。しかし、観察機材と撮影機材が日進月歩の進化をしている。ネット情報はリアルタイムに鳥の出現が分かる時代になっている。鮮明な画像も大量に公開されている。一年中情報収集が可能である。今季は過ぎたと思っても次の観察の計画立案には困らない程の情報が氾濫している。全ての情報を収集することは不可能でもメジャーなブログ、掲示板そしてホームページなどをチェックしていればリアルタイムの情報が伝わって来る。そんな時代に識別は困難だとは言ってはいられません。今回はジシギの基本となるタシギの識別から始めてみます。タシギは九月になると渡来し始めます。本州中部以南では越冬する。特に、降雪や結氷の無い温かい南西諸島では個体数が多い。春は三月上旬から北上の渡り、繁殖の為の移動が始まります。SHOREBIRDSでは繁殖期は四月から八月になっている。移動は常に成鳥から始まる、次いで幼鳥が渡る。タシギは二亜種がいる。北米産delicataは別種に独立。アイスランド産Gallinago faeroeensisと日本などで観られるGallinago gallinagoである。ユーラシア大陸全域で繁殖する種である。タシギは嘴が基部から先端まで一様に細く極めて長いのが特徴です。頭の大きさ・長さに比較して嘴はどれくらいの比率かという試みは誰でも知っているところでもある。しかし、それが絶対的識別点では無いのです。それは個体差、雌雄、年齢によりいろいろな変化が知られている。♀の成鳥は♂のそれよりも長いということは知られている。画像から極めて長く見える個体は多分♀の可能性が大と思われます。顔の模様では目先線は眉斑より太いのが普通ですが、これもひとつの傾向で全てがそのような個体では無い事が観察されます。体形ではやや他の個体よりは細身に見えやすいが、状況により個体が緊張状態、リラックス状態によりその体形は全く異なることはバーダーならご存知の筈です。つまりどんな場合でも平常心、観察者も鳥たちも、である。肩羽は成鳥では羽縁外側が太くそれが一列になって見えることがある。通称バフ色と言われる白の汚れたベージュ色を指すことが多い。しかし、そのバフ色も千差万別である事に気が付けばジシギマニアであること間違いないです。生息地は春秋の渡り、越冬地では水のある湿地とその周辺を餌場としている。水のある泥地では単独或いは集団で嘴を激しく上下に動かして泥の中の生物、イトミミズや幼虫などを捕食する。観察していると激しく上下している頭・嘴は一時静止して、クイッと上に持ち上げる動作をする。これは捕食した餌を飲み込む瞬間です。タシギはこのように水の中や柔らかな泥地を主な餌場とするように嘴は基部から先端まで一様に細く進化した。と筆者は結論づけているのです。勿論、水の無い畔の上や畔の側面などを突いて餌を捕る事もあります。水中に居るというだけでタシギと結論付けるのは間違いです。他のハリオ、チュウジ、オオジも水中で捕食することはよくある事です。

ジシギの観察は至近距離で、スコープなどで、長時間丁寧に観察するのが基本です。JIZZを使用するにはそれなりの経験と知識が必要です。

図鑑で覚えたことからフイールド経験が少ないのにJIZZ的というのはちょっと早いと思います。タシギが畔の上で草地をちょんちょんちょんと突いていることは良くあります。ハリオシギや他のジシギのように畔の上で嘴を深く突き刺すことは無いのです。この辺のニュアンスは確かめてください。それでも稀にはミミズや幼虫を捕食することがあります。

少なくとも採餌、休憩、採餌、水浴・羽繕い・伸び、採餌、休憩、など繰り返して観察しているとそれらは主に何処が餌場なのか、ということが観えてきます。そういう一連の行動の中からタシギ的行動が集約されて来るのです。一連の動作の中から、水浴び、羽繕い、伸びは詳細な情報を入手する大切な瞬間です。観察と撮影を繰り返し経験を重ねる。翼下面は羽ばたき、伸び、飛翔の時によく見えます。淡色・白っぽいのはタシギだけの特徴です。次列風切後縁は明確に白い帯状態に見えます。この二点を確認すればタシギである。先ず、間違いはありません。最後は決定的な識別点の尾羽です。つまり、迷ったら、悩んだら、困ったら最後の拠り所ということです。それ以前に分かれば問題ないのです。

タシギは12-(14)-16枚が普通。16枚は北アメリカ産のdelicataの特徴です。通常は14枚です。尾羽は真ん中・中央尾羽、T-1と表示する。外側にT-2,T-3,T-4,T-5,T-6,T-7となる。T-1の黒帯が最も濃く目立つ。これはジシギに共通です。真ん中がどうして重要か?それは尾羽が全開しても全てが見えるということは非常に稀な事です。そこで、片側だけでも正確に見えれば、それは片側全数×二倍≒全数ということです。ですから中央尾羽の位置は極めて重要なポイントになるのです。ジシキ観察に馴れてくればタシギの尾羽はほぼ等幅であるということに気が付きます。最外側尾羽、T-7は淡色で黒帯が入る。全体的には明るく見えます。畔から飛び出したタシギはジェーッ、ジェーーッとハスキー・しゃがれた声・で伸びた声・長音で鳴き、或いは鳴き交わしながら次第に上昇する。飛びながら体を左右に傾けジグザグに飛ぶ。時には円を描くように飛び立った場所に戻り着地することもある。つまり、元々の場所は餌場、隠れ場所としてお気に入りの場所である。証明でもある。

越冬地では複数で行動することが多く、足元から飛び立つタシギ、一羽、二羽、三羽。みんな飛び去ったか?それとも未だ残っているか。1-3羽が飛び立ったら、次の行動に注意しましょう。2-3羽の小群なら全て飛び立つことが多いです。しかし、10羽程度の群れでは、1-2-3-4羽が飛び立つ、未だ残っている可能性は大です。つまり数羽飛び出したら次は慎重に行動しましょう。という経験則です。

最後に絶対的識別点は以下の通りです。翼下面が淡色で白っぽく見える。次列後縁ははっきりと白帯が見える。尾羽は12-(14)-16枚で最外側は淡色で黒帯、明るく見える。尾羽はほぼ等幅に見える。その他、行動から分かることもあり、経験によりJIZZで即識別できる事になる。

ジシギの楽しみ方は経験と知識により様々。種を覚えること、季節、年齢による羽衣の変化などいろいろある。ジシギの生態行動を観察するだけでもだんだんとその種が何であるかが分かって来るようになります。つまり、ジシギの些細な生態行動の違いが分かればどんどん識別に嵌り込んだと言う事になります。

筆者は第一回冬羽、成鳥冬羽。第一回夏羽、成鳥夏羽の識別をテーマに観察を続けているのです。これまでは種の中の多様性という事にジシギの奥深さを知らされた感じがしています。一年を通じて羽衣の変化が分かると楽しくなる筈です。

タシギのエピソード、タシギは柔らかい泥地を餌場とするのが得意です。しかし、稀には畔の上でも地面を突く事が有ります。ハリオや他のジシギたちの様に嘴を基部の方まで地面に差し込むことはありません。表面だけでもちょこっと差し込んでいる時太いミミズが飛び出してくることがあります。そんな時のタシギは他のシジシギとは比べものにならないくらいに捕食するのが下手なんです。やっと銜えても飲み込むまでのタイミングの悪さ遅さにはハラハラドドキものです。やっと飲み込み水溜りで嘴を洗い水を飲む姿は本当に愛おしいものです。2012,09,0409,13校正


 飛翔するタシギ、翼下面の淡色と次列後縁の明瞭な白帯

ジェーッジェーッと鳴きながら飛ぶタシギ。秋の渡り。


 Golden Snipe Gallinago Aurum キンジシギ 黄金地鴫
2022.05.14renewal
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