オオジシギ・大地鴫の暦
オオジシギのライフサイクル

卵 ⇒ 雛 ⇒ 幼鳥・幼羽 ⇒ 第一回冬羽 ⇒ 第一回夏羽 (繁殖期)

(繁殖期の♀=乱婚・交尾・複数♂と、営巣・産卵⇒孵化⇒育雛→幼鳥。

子育ては♀だけで行う。

繁殖期の♂=ディスプレイフライト・テリトリー・交尾は複数♀と)  ⇒ 

テリトリー内は一夫一婦制

冬羽 (非繁殖期)  ⇒ 夏羽 (繁殖期) ⇒ 冬羽(非繁殖期)

by HappyChappy 2012,08,01

2013,0715一部訂正

以下の暦は平均的なものです。多少の早い遅いはあります。と考えながら読んでください。

 
日本・繁殖地 春と秋の渡り 越冬地 備考
本州の高層湿原・北海道では原生花園等 豪州オーストラリア・東部
緯度的には九州から台湾
と同じ程度気候的には不明
越冬地


春の渡り


繁殖地


秋の渡り


越冬地


春の渡り

1月 越冬地(豪州は夏)
2月
3月 北上、春の渡りが始まる
4月上 (先島諸島・与那国島渡来。)オオジシギプロジェクト調査により日本とオーストラリアはノンストップフライト1週間。行も帰りも同様です。 北上、春の渡りが始まる。
4月中 本州、北海道渡来。関東・当地江戸川流域水田地帯では4月下旬6羽の群れを観察した。2022.05.23記 春の渡り・移動の最盛期
4月下 繁殖地に渡来、本州から北海道、ディスプレイ始まる
5月上 ディスプレイフライト始まる、最も活性化する、終日続く
5月中 ディスブレイフライト続く
5月下 ディスプレイフライト続く
6月上 ディスプレイフライト続く、活性度低下し始める。
6月中 ディスプレイフライト続く、活性度更に低下する。雛連れ観られる
6月下 ディスプレイフライト極めて少なくなる
7月上 ディスプレイフライトほぼ終息 関東平野に南下、秋の渡り始まる、成鳥、冬羽へ換羽始まる
7月中 ディスプレイフライト全く見られない
7月下
8月上 幼鳥の渡りも始まる 越冬地(豪州は春⇒夏)

(集団・数ダースの
群れで夜間に採餌する)
SHORE BIRDS
8月中
8月下
9月上 渡りはほぼ終了
9月中
9月下 ・遅い個体が観られる
10月
11月
12月
1月
2月
3月
4月上 ((先島諸島・(与那国島)渡来。))夏羽で渡来(成鳥・夏羽、第一回冬羽から第一回夏羽) 成鳥

冬羽・非繁殖羽から夏羽・繁殖羽


夏羽から
冬羽



幼鳥

幼羽


幼羽から
第一回冬羽

(12-1月には完了
)


第一回冬羽から第一回夏羽


成鳥冬羽
4月中 以下同上
4月下
5月上
5月中
5月下
6月上
6月中
6月下
7月上 成鳥の換羽と渡り、夏羽から冬羽への換羽
7月中
7月下
8月上 幼鳥の渡りと換羽、幼羽から第一回冬羽への換羽。 越冬地(豪州は春⇒夏)
8月中
8月下 渡りの途中から換羽は進み年内?には第一回冬羽。
但し、下雨覆などは幼羽が残ると言われている。
9月上
9月中
9月下
10月
11月
12月
1月 第一回冬羽から第一回夏羽
への換羽。成鳥冬羽から夏
羽へ換羽している。と思わ
れる
2月
3月
4月上
4月中
4月下
5月上
5月中
5月下
6月上
6月中
6月下
 解    説

年が明ける頃の豪州・オーストラリア・東部は季節は夏である。日本では真冬の季節である。赤道を通過して南半球では季節は反対になる。この時期の日本の越冬地では最も安定して生息が確認できる頃でもある。オーストラリアでも同様な状況なのでしょうか。立春が過ぎて春分の頃には春の渡りが始まっている。と思われる。四月に入ると先島諸島ではいろいろな鳥たちの渡りが増え始める。ジシギたちも例外では無い。草原を好むオオジシギを牧場などで見つけることは難しい。たまたま牧場の農道を走っていたら草地から、ゲッとあの声で飛び立ち低く飛びながら直ぐに近くの草地に降りてしまう。あの特徴から誰しもオオジシギと断定することはそんなに難しくは無い。四月の上旬に本州・関東平野での個体はほぼ綺麗な繁殖羽・夏羽になっている。四月下旬から五月上旬には繁殖地に到着してディスプレイフライトが始まる。そのエネルギッシュなディスプレイフライトは終日続けられているのです。五月の奥日光・戦場ヶ原では真夜中にもそして早朝暗いうちから夕方日没後もディスプレイフライトが真っ暗な上空から聴こえてくるのです。いつか満月の夜のディスプレイフフライトを観たいと思っています。あのようなディスプレイフライトを観ていると、太平洋など一っ飛びで移動してしまうのでは、と思うこともあるのです。繁殖地では♂たちが集団でディスプレイフライトを時折しているのです。広大な原生花園のあちこちから♂が飛び立ち一羽、二羽、三羽・・・・・・・・最大で七羽(♂♀比は不明)のフライトを観察している。ここから先は文献情報も加えて解説してみます。ディスプレイフライトは互いに付かず離れずジッジッジッ、じーーっじーーっじーーっ、スビヤクズビヤク・ザザザーっなど各個体がいろいろなディスプレイとソングを繰り返して広大な原生花園を飛び回り続けます。そんなグルーブディスプレイの集団に♀個体が加わります。先頭を飛ぶ♀は期が熟すと、突然草地へ着地します。その着地の前後のジッジッジッ、ズビヤクズビヤク、ジャッジャッジャッ、ゲゲゲッなど極めて複雑な音・声が聴こえてきます。♂も次々に着地してそこでは交尾が始まるのです。♀は複数の♂と交尾する、所謂乱婚、一妻多夫の繁殖行動ということになります。オオジシギは性的ニ型(形)で繁殖行動は♂♀異なるのです。つまり、♂は交尾だけで当然複数の♀との交尾を行います。♀は複数の♂と交尾して営巣・産卵・育雛全てを単独で行う。ということになります。♂の単独ディブレイフライトのテリトリーの中に全ての♀が居るのかどうかは分かりませんが当然、必死で守るテリトリーには♀・雛が居ると思うのが当然です。六月になると雛が孵化します。早いと上旬頃には雛連れを観たという情報が多数聴いています。六月中旬には紋別市の国道を横切る親子・母子を観察・撮影しています。この頃になると♂はデイスプレイフライトの回数、時間などどんどん少なくなるのです。多分、夏至を過ぎて日の長さが短くなり始める頃です。七月に入るとディスプレイフライト・ソングは殆ど見られなくなるのです。それでも一日中観察していると、突然草地から飛び立ちデイスプレイフライト・ソングを一回だけ、或いは前奏だけ、そして遂には静かになるのです。その頃には渡りのモードへの変換中で飛び立ちなども草地からゲッと一声、低く飛び出しあっという間に草地に降りてしまうのです。もうこれは渡りのモードそのものになっています。早い年には七月に入ると関東平野に成鳥の秋の南下が始まります。既に繁殖羽から非繁殖羽への換羽も始まっているのです。換羽が始まる頃に成鳥たちの秋の渡りが始まるのです。雛は幼鳥に育ち母離れ・親離れの時になります。そして日本では最も暑い八月になると幼鳥たちの渡りも始まるのです。八月が渡りの最盛期で九月上旬にはほぼ渡りも終わるのです。幼鳥の個体も幼羽から第一回目の冬羽への換羽が始まり、いろいろな段階の個体が観察されます。換羽がほぼ完了している個体から新鮮な幼羽のままの個体など様々です。渡りの季節には複数で渡ることが多く、2-3羽が共に行動している幼羽は実によく似ていて、瓜二つというような兄弟・姉妹と思える場面に度々出会うのです。これはチュウジシギやタシギでのエピソードてです。三羽の幼鳥が一緒に行動していた。見るからに一羽が小さい、大きな個体がミミズを追い出した。すると小さな個体・妹か弟か、が突然そのミミズを横取りしてそこから離れました。取られた兄か姉は何事も無かった様子で小さな個体を無視していました。普通なら自分の餌を横取りされたら無視はしていません。争いが起こります。そんな光景を一人観察していると、ふーーーーーん兄弟愛なんだなーー。なんて人間は醜いのでしょうかね・・・。九月になり、秋風が田んぼを通過して涼しくなる頃にはチュウジシギやタシギが渡来し始めるのです。オオジシギの渡りのルートも定かではありませんが、北海道から本州・関東、九州へと渡るのです。その先は大陸説、南西諸島説など諸説があります。石垣島、台湾、フイリピンを通過して最終地のオーストラリアの東部へ到着するのです。越冬地では草地・湿地などで集団?・数ダース24-36羽で夜間に行動する。というように図鑑SHORE BIRDSには記載されています。日本でもヤマシギは夜間が主に活動をする。と記載されていますが、安全な場所、時間帯・早朝・夕方にも行動しています。同様にオオジシギもそのような行動をしているのでしょうか。十月でも稀にはオオジシギが観察されるのです。何らかの理由・遅い繁殖などで、遅れて渡来するのです。十一、十二月になり・・・・・幼鳥・幼羽から第一回目冬羽(12月-1月には完了。沖縄で越冬するジシギ、タシギ・ハリオ・チュウジも同様な換羽が観られます。)へ換羽して春には第一回目夏羽になり繁殖地に渡ります。第一回夏羽が繁殖するか否かは分かりませんが、俺の推論では繁殖すると思っている。繁殖期の初期・前期・五月初旬頃には羽毛は整っています。これが中期・後期・六月から七月には肩羽も雨覆いも尾羽も退色して摩耗・脱落しています。四月に与那国島で見るノゴマ、五月に舳倉島他で見るノゴマはとても鮮やかな朱色の喉の日の丸です。ところが六月に見る道東のノゴマは子育て真っ最中です。その日の丸は色褪せて脱羽、擦り切れなどで汚れてしまっているのです。初めて道東で観るノゴマはなんて綺麗なんでしょう。と思うのが普通です。でも・・・・、鳥たちは繁殖期前が最も綺麗な羽毛・色だと思います。繁殖期だから綺麗な羽毛というのはちょっとだけ違うのです。そんな些細な変化に気が付くとどんどん面白くなるのです。繁殖期を終えた第一回目夏羽から成鳥の冬羽へと換羽が進むのです。そして年が明けてオオジシギのライフサイクルは続くのです。

 2012,06中旬野付け半島、繁殖期・後期のオオジシギの繁殖羽・夏羽は退色して摩耗・脱落が観られる。換羽は始まって無い個体。

6月下旬野付け半島、繁殖期後期、ブルースカイにディスプレイフライトするオオジシギ。尾羽、中央・中間尾羽の脱落がある。俺の耳では、脱落の無い個体との違いが分からなかった。

白夜のような濃霧のなかでは低く飛ぶディスプレイフライトが間近に観られます。好天になり晴天・快晴ではオオジシギは高く高くディスプレイフライトするので遠くになるのです。どちらも好きでは無い、晴れて近くを飛んで欲しいと思いながらもなかなか観られないのです。



七月上旬、サロベツ原生花園、繁殖期・後期のオオジシギはディスプレイフライトは殆ど観られなくなる。前奏・ジッジッジッ程度で終了する。時折短時間のフライトは行われる。この個体は既に繁殖・夏羽から冬・非繁殖羽へと肩羽が換羽を始めている。繁殖が終われば着替えを始める
 

 

 

秋の渡りのオオジシギ、夏羽・繁殖羽から冬羽へ換羽中の成鳥。2012,08上旬。



秋の渡りのオオジシギ、夏羽・繁殖羽から冬羽へ換羽中の成鳥。2012,08上旬。

 


上と同一個体。肩羽はほぼ冬羽・非繁殖羽に換羽している。

 あ と今年は特別にテーマも決めずに道東に向かった。セリ科の花は別として。オオジシギもいろいろな場面で遭遇しているから、今年は敢えて地上のオオジシギの餌場を観察して見た。これはなかなか難しい。ディスブレイの最中なら声・音のする方向を探せば直ぐに見つけられる。それでも繁殖期・前期では五月中頃まで、地上でも相当なディスプレイソングをしているのが分かります。六月に入るとそのデイスプレイソングはどんどん少なくなり、前奏のジッジッジッだけでソングのズビヤクズビヤクズビヤクまで続くことは少なくなる。何年も道東に出かけていると、彼らの餌場所も分かって来る。そんな餌場の側で観察しているとデイスプレイソングをしていればかなり接近は可能です。ところが、少なくなる繁殖期後期には渡り・移動モードにも変化していて声を発しなくなります。更には警戒心も繁殖期のそれとは相当異なります。つまり渡り時期のオオジシギそのものです。それらを観察していると繁殖期から非繁殖期の渡りモードへ徐々に変化していることが分かるのです。今回は、オオジシギのカレンダー・鳥暦を作ってみました。観察から分かること、他の情報から分かることを繋ぎ合わせてみました。越冬地のオオジシギはどのような生態が観られるのでしょうか。寒い冬、オオストラリアの夏でオオジシギの生態を観たいと思うこの頃です。2012,08,01 by HappyChappy画像は後から追加しています。 renewal 2022.05.23
 Golden Snipe Gallinago Aurum キンジシギ 黄金地鴫
inserted by FC2 system