見る図鑑
Tailfeathers Illustration 2012,09,18 |
ジシギの識別にはいろいろな手法がある。細部にわたり全体をチェックする。そして最終的にはJIZZによる判断である。しかし、全体を見せてくれることは少なく肝心の特徴も押えきれないなど完璧な観察は少ないのです。そして観察はできてもハリオかなチユウジかなと迷いが生じることは良くあることです。そんな時は迷わず尾羽を観察することが最終手段になる。では、迷ったまま尾羽が観察できない、特定できない時はどうするかである。それはそのままジシギSP,とするのが正しい判断です。但し、いろいろな条件からハリオ、チュウジと思う、という自身の判断はそれで良いと思っている。何時か観察を続けていると同じ、或いは同じような特徴を有するジシギと再会する。その時、改めて尾羽を含めて確実な情報が得られれば過去の全ての情報は、あの時のあれはハリオだった。という訂正を付記すれば良いと思う。毎年、毎年新しい個体と遭遇し謎が増える一方、過去の謎が解けることもあるから。沖縄の秋のジシギの渡りを五年間も続けたのに未だ不思議なことばかりである。それらのことはブログやホームページに何度も繰り返し書いている。しかし、である。百聞は一見にしかず。ですよ。いろいろな個体が居ると書き続けても、JIZZ的には云々で処理される。ことが多いのです。本州を通過する種と南西諸島の種の個体差、個体の多様性についても何度か書いている。いろいろな個体を観るほどに悩みは増えるばかりである。つまり、悩んだりすればそれは尾羽が最終の拠り所です。新しい個体の識別に答えがでれば次は簡単に解けるのです。尾羽に拘り図鑑を拡大して見たり自分自身で描いて見たりした。すると不自然さに気が付く。どんどん尾羽が分かって来る。観る角度、開き方、重なり、などなどいろいろな事が分かり、謎も深まる。あちこちに描いたイラストは数限りなくあります。モノクロから色鉛筆そして水彩着色までトライしている。実物の画像を模写しようとは思わない。実物なら画像に勝ることは無いから。いろいろな画像の集約をイラストで表す。一つ、一つ個体が異なるからそれを特徴的に表す。それを今回は集めてみました。東京海鳥の会室内会2012,02開催の資料をアレンジして使用しました。 |
1,タシギ、Common Snnipe Gallinago gallinago
通常14枚(12-14) T-1、中央尾羽、左右一対ある。尾羽の一番上、二番目になる。半開きでは黒帯が最も突出して黒く見える。T-2,T-3T,-4T,-5T,-6,中間尾羽5枚、対になる。T-7,最外側尾羽一対。淡色地に黒帯があり全体的には明るく見える。T-1,からT-7,までほぼ等幅に見える。通常野外では全部が見えることは稀で片側だけでも全数が見えれば、側 × 2 ≒ 全数になります。タシギでは翼下面の淡色と次列後縁白帯が明瞭、の一つ又は二つを確認すれば尾羽の確認は不要です。ジシギの中では最も簡単に観られる尾羽です。タシギでその開き方、重なり、形状、枚数、色などトレーニングしてみましょう。タシギの尾羽を軽視していては、チュウジシギ、ハリオシギなどは絶対に観察は不可能です。先ず、タシギを完全にマスターして観ましょう。2022.05.09追記 |
中央尾羽尾羽を半開きの際には点線より下部分の黒帯が上尾筒から突出している。全てのジシギに共通です。片側尾羽のカウントには重要です。 タシギ、Common Snnipe Gallinago gallinago |
2,ハリオシギ、Pintail Snipe Gallinago stenura
通常26枚(24-28)
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T-1,中央尾羽、左右、一対。T-2,T-3,T-4,T-5,T-6,中間尾羽、5枚、対。T-7,T-8,T-9,T-10,T-11,T-12,T-13外側尾羽は7対、(6-8対)で細く = 針状、且、短い。このような全開、扇状に見えるのはディスプレイフライト以外では不可能です。片側の外側尾羽、針状を一本・1枚でも確認、撮影されれば確実です。平たい尾羽を水平に見ると細く、薄く見えることもあるので写し方、見方は正しく見ないと誤認することが多い。稀に尾羽・中央・中間、換羽中の個体で外側尾羽が飛び出していることがあります。ハリオシギの外側尾羽 = 針状は尾羽を広げても簡単には見えないことも特徴のひとつです。それは重なり、短いという特徴があるから。後述解説します。 |
ハリオシギ、Pintail Snipe Gallinago stenura
短い針状で羽軸だけのように見えるが実際には内弁外弁がある
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3,チュウジシギ、Swinhoe's Snipe Gallinago megala
通常20枚(18-22,26)
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T-1,中央尾羽、左右、一対。T-2,T-3,T-4,中間尾羽、三枚、対。T-5,T-6,T-7,T-8,T-9,T-10,外側尾羽6対。通常は黒色部が多いので黒く見える。このような全開図・扇状で全てを野外で観察することは無い。半分から3/4程度の開き方はある。チュウジシギでは片側全数 = 10枚が見られることは稀にある。それは外側尾羽も中央・中間との重なり、段差が少なくちょっとの開きでも外側がちらりと見えることが多いのです。ハリオシギでも書いたように尾羽は形で判断する時は特に平面的な見方をする事です。 2013,06,27追記最近気が付いた事ですが、チュウジシギの最外側尾羽が極めて細く、針状に見える個体がいます。針一本でも針尾ですが、全体の尾羽のどの部分かなど併せて判断するのがミスジャッジが少なくなります。 チュウジシギ、Swinhoe's Snipe Gallinago megala |
4,オオジシギ、Latham's Snipe Gallinago hardwickii
通常16-18(12-19) T-1,中央尾羽、左右、一対。T-2,T-3,中間尾羽、二枚、対。T-4,T-5,T-6,T-7,T-8,外側尾羽、5枚、対。尾羽18枚では外側尾羽6枚対。外側尾羽はT-6,T-7,T-8では白色部が多く淡色に見えるのが普通。幼鳥では外側尾羽3-5枚が淡色に見えることが多い。ディスプレイフライトでは全開の尾羽を観察することができます。外側尾羽は順次細くなることに注意です。デイスプレイフライトの尾羽を良く観察してみましょう。実際の画像では外側の尾羽は内側にカーブしているのがよく分かります。内弁・外弁を理解すること。 |
オオジシギ、Latham's Snipe Gallinago hardwickii
通常16-18(12-19) オオジシギ、Latham's Snipe Gallinago hardwickii
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5,ハリオシギの針尾は何故見えない・見えにくいのか? 以下の解説は筆者独自の観察経験から導き出されたものです。何年か後の図鑑に |
ハリオシギ段差大 チュウジシギ 段差小 真横・水平的からの視点 尾羽の段差に注目 平面・上面からの視点 |
畳んでいる尾羽を描いたものです。左はハリオシギで右はチュウジシギ、変わらない。違いがあるのです。チュウジシギではちょっとの開きで外側尾羽も直ぐに見えることが多いのです。ところが、ハリオシギでは短く、且、細いのでちょっとの開きでは中央・中間尾羽と重なり外側尾羽が見えにくい・見えないことが多いのです。ハリオシギの外側尾羽は観えないのではない、見え難いが正しい。 |
6,尾羽の見方・見え方
幅広い尾羽でも平面的に見なければ、どんどん細く見えてしまいます。すると、ハリオかなという結論に達してしまうことが有るのです。特にチュウジシギの尾羽を斜めに見たり、重なりにより細く見えてしまうことがあります。 |
7,外側尾羽の比較
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8,外側尾羽だけの比較
左上タシギ、右上ハリオシギ 左下チュウジシギ、右下オオジシギ |
9,ハリオシギとチュウジシギの外側尾羽の比較 2mm幅は爪楊枝の太さです
ハリオシギは1-2mm,チュウジシギは2-4mmで重なると思ってしまいます。1-2mm,2-4mmとは尾羽先端部から20mmでの計測値です。SHOREBIRDS1mmと2mmと4mmを比較してください。 |
同じようなポーズで尾羽・外側尾羽の見え方 上は頭側線が濃くバフ斑点も目立つ個体、下は頭側線はやや淡いがバフ斑点も目立つ似たような個体です。同じ姿勢から何か異なるJIZZは見つかりますか?共に広げた尾羽の外側尾羽の見え方・段差・短さが顕著です。細く・短い・が必要十分条件です。ですから
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中央尾羽の先端部と外側尾羽先端部は段差が大きいです、右側では外側尾羽は隠れて見えない。上のチュウジシギと下のハリオシギの外側尾羽の違いが分かれば良い。よく観ると分かります。 これを理解できないと自分が撮った画像の判断ができません。 |
この個体は俺の中では標準的ハリオシギです。ところが色彩に拘ると一見して、タシギ?、チュウジ?、ハリオ?と堂々巡りが始まるのです。 |
以上のイラストは実際の尾羽とは形状、色彩など異なります。前記のように個体間の差をイラスト化するのに簡単に描いたものです。ほんの一例です。これらのことを理解の上観察から更に新たな知見が得られることを期待しています。 |
2021.09.17一部修正 |